光で変わる私の睡眠

心地よい眠りへと誘う夜の光 体内時計と照明のやさしい関係

Tags: 睡眠, 快眠, 光環境, 体内時計, 照明

夜の光が眠りを左右する大切な役割

年を重ねるにつれて、若い頃のようにぐっすり眠れなくなったと感じる方は少なくないかもしれません。眠りに入るまでに時間がかかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったり、朝早く目が覚めてしまって、そのまま眠れなくなったりすることもあると聞きます。こうした睡眠に関するお悩みには、さまざまな要因が関係していますが、実は「光」の浴び方が深く関わっている可能性があります。特に、夜の時間帯にどのような光の中で過ごすかが、心地よい眠りにとって大切なのです。

私たちの体には、「体内時計」と呼ばれる、およそ24時間周期のリズムを刻む仕組みが備わっています。この体内時計が正常に働くことで、昼間は活動的になり、夜になると自然と眠くなるというリズムが生まれます。そして、この体内時計を整えるために最も大きな役割を果たしているのが、「光」です。朝に明るい光を浴びることで体内時計がリセットされ、そこから約15〜16時間後に眠気を促すホルモンである「メラトニン」の分泌が高まると言われています。

しかし、夜に強い光を浴びてしまうと、このメラトニンの分泌が抑えられてしまいます。これは、体が「まだ昼間だ」と勘違いしてしまうためです。特に、現代の生活には、昔にはなかったような強い光があふれています。例えば、リビングの明るい照明や、テレビ、スマートフォン、パソコンといった画面から出る光などです。これらの光が体内時計を乱し、眠気を遠ざけてしまうことがあるのです。

心地よい眠りを誘う夜の照明の工夫

では、心地よい眠りを誘うためには、夜の光をどのように調整すれば良いのでしょうか。ここでは、ご自宅で簡単にできる光の工夫をいくつかご紹介します。特別な道具は必要ありませんので、ぜひ今日からでも試してみてください。

1. 照明の色を暖色系にする

蛍光灯のような白い光(昼白色や昼光色)は、日中の活動に適していますが、夜に浴びると脳を覚醒させてしまいやすいと言われています。一方、電球色のようなオレンジがかった暖色系の光は、リラックス効果が高く、体も心も落ち着かせやすい傾向があります。

夕食後や寝る前の時間は、できるだけ暖色系の照明のもとで過ごすように心がけましょう。お使いの照明器具に調色機能があれば、夜には暖色系の色に切り替えるのが良いでしょう。もし、調色機能がなくても、夜用の補助照明として電球色のスタンドライトなどを用意するのも一つの方法です。

2. 照明の明るさを抑える

夜遅い時間まで、昼間と同じように明るい照明をつけていると、体が夜であることを認識しにくくなります。就寝に向けて徐々に部屋の明るさを落としていくのが理想的です。

例えば、リビングでは部屋全体を照らす主照明だけでなく、壁や床を照らす間接照明や、手元だけを照らす小さなライトなどを活用し、必要な場所だけを控えめな明るさにするのがおすすめです。寝室では、寝る前に読書などを楽しむ場合でも、手元を優しく照らす程度の明るさのスタンドライトを使用し、天井の主照明は消すようにしましょう。

減光機能や調光機能がついた照明器具であれば、より細かく明るさを調整できます。一度に真っ暗にするのではなく、段階的に明るさを落としていくことで、体は眠りの準備に入りやすくなります。

3. 直接的な強い光を避ける

人の目(特に視神経)に直接強い光が入ると、脳は覚醒しやすくなります。特に、寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を至近距離で見続けることは、体内時計を大きく乱す原因の一つとなります。

寝る1〜2時間前からは、できるだけスマートフォンの使用を控えることが望ましいです。どうしても使う必要がある場合は、画面の明るさを最も暗く設定したり、「ブルーライトカット」機能を活用したりすることも検討できます。また、テレビを見る際も、画面から少し距離を取り、部屋を真っ暗にするのではなく、控えめな明るさの照明をつけた状態で見る方が、目への負担や覚醒作用を和らげることができると考えられています。

穏やかな光で心地よい眠りへ

夜の光環境を整えることは、体内時計を整え、自然な眠気を誘うためのやさしいアプローチです。難しいことや特別な設備は必要ありません。ほんの少し照明の色や明るさを意識し、寝る前の強い光を避けるように心がけるだけで、眠りにつきやすくなったり、眠りの質が改善されたりする可能性があります。

加齢による睡眠の変化は自然なことでもありますが、光を味方につけることで、その影響を穏やかにすることができます。今回ご紹介した夜の光の工夫を、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。きっと、これまでとは違う心地よさを感じられるはずです。穏やかな夜の光の中でリラックスし、自然な眠りへと誘われる感覚を体験していただければ幸いです。