年を重ねるにつれて変わる光の見え方と、深い眠りを育むための照明の考え方
加齢による光の感じ方の変化が睡眠に与える影響
年齢を重ねると、若い頃に比べて「寝つきが悪くなった」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」といった睡眠の悩みを感じることが増えるかもしれません。これには様々な要因が考えられますが、実は「光の感じ方」の変化も関係していることがあります。
私たちの体内時計は、朝の明るい光を浴びることでリセットされ、夜に暗くなることで眠気を誘うホルモン(メラトニン)が分泌される仕組みになっています。この光を感じ取るのは主に目ですが、年齢とともに目の機能も自然と変化していきます。
特に、目のレンズにあたる水晶体は、加齢とともに少しずつ濁りやすくなる傾向があります。この変化によって、特に朝の光に含まれる、体内時計を調整する上で重要な「青い光」が目に入りにくくなることが考えられます。青い光が十分に脳に届かないと、体内時計がうまくリセットされず、夜になっても自然な眠気を感じにくくなったり、眠りが浅くなったりすることにつながる可能性があります。
快眠のためにできる光の調整の工夫
では、年齢による光の感じ方の変化を踏まえて、より良い眠りのためにどのような光の工夫ができるでしょうか。特別な道具を使わなくても、日常生活の中で少し意識を変えるだけで実践できることがあります。
1. 朝はしっかりと光を浴びることを心がける
体内時計をリセットし、規則正しい眠りのリズムを作るために、朝の光は非常に重要です。加齢によって光を感じにくくなっている可能性があるからこそ、意識してしっかりと光を浴びる時間を設けることが大切です。
- 実践方法:
- 朝起きたら、カーテンを開けて外の光を部屋に取り込みましょう。
- 可能であれば、朝食後などに少し時間をとって外を散歩するのも良い方法です。曇りの日でも、屋内の照明よりずっと明るい光を浴びることができます。
- 窓際で新聞を読んだり、軽い体操をしたりするのもおすすめです。
- 期待される効果: 朝の光を十分に浴びることで、体内時計が適切にリセットされ、夜自然な眠気を感じやすくなることが期待できます。日中の活動的な気分にもつながります。
2. 夜は早い時間から光を控えめにする
夜、特に寝る前に強い光を浴びると、眠気を誘うメラトニンの分泌が抑えられてしまい、寝つきが悪くなる原因になります。加齢によって光への感受性が変化している場合でも、夜の強い光を避けることは大切です。
- 実践方法:
- 夕食後からは、部屋の照明を少し暗めにしたり、暖色系の落ち着いた色合いの照明に切り替えたりすることを検討しましょう。
- 直接的に強い光が目に入らないよう、スタンドライトなどを使うのも良いでしょう。
- 寝る1~2時間前からは、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの画面を見る時間を減らすことをお勧めします。これらの画面からは、体内時計に影響しやすい青い光が多く出ています。画面の明るさを下げる、ブルーライトカット機能を使うといった対策も助けになります。
- 寝室の照明は、就寝前に使うことを考えて、調光機能や暖色系の照明を選ぶのも良いでしょう。
- 期待される効果: 夜間の光刺激を減らすことで、メラトニンの分泌が妨げられにくくなり、自然な眠気を促し、よりスムーズに眠りに入りやすくなる可能性があります。
3. 寝室の照明選びを考える
寝室の照明は、眠りに入りやすい環境を作る上で重要な役割を果たします。
- 考え方:
- 寝室には、部屋全体を明るくするシーリングライトだけでなく、調光機能付きのものや、寝る前の読書などに使える小さなスタンドライトなどを組み合わせるのがおすすめです。
- 光の色は、リラックス効果があると言われる暖色系のものが適しています。蛍光灯のような白い光よりも、電球色のようなオレンジがかった光の方が落ち着きやすいでしょう。
- 就寝前の準備をする際には、必要以上に明るくせず、落ち着いた明るさにとどめるようにしましょう。
- 期待される効果: 寝室の照明を工夫することで、眠りに入るまでの時間をリラックスして過ごしやすくなり、スムーズな入眠につながる可能性があります。
まとめ
年齢を重ねるにつれて、私たちの体の機能は自然と変化していきます。目の機能の変化によって光の感じ方が変わり、それが睡眠に影響を与えることも考えられます。しかし、これは特別なことではありません。
朝に意識してしっかりと明るい光を浴びる時間を持ち、夜は早い時間から光を控えめにする。そして、寝室の照明にも少し気を配る。このような日常生活の中でできるシンプルな光の工夫が、体内時計を整え、心地よい眠りを育むための助けになる可能性があります。
薬に頼る前に、まずは身近な光環境を見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。これらの工夫が、皆様のより穏やかで深い眠りにつながることを願っております。